本の紹介

本のタイトル『縄文的なるもの 白井晟一の建築と人』 水原徳言

本のタイトル『縄文的なるもの 白井晟一の建築と人』 水原徳言

2022年1月、白井晟一が設計を手がけた渋谷区立松濤美術館で、40年間使われていない茶室が公開された。「Back to 1981 建物公開」と題された展覧会では、建築模型や図面はほとんど見られない。空になった展示室に足を踏み入れ、松濤美術館という建築そのものをまじまじと見る機会が提供されている。メインである茶室は入室こそ不可であったが、覗き込むように見るその形式によって、空間は神聖さを保っているように感じられた。未だ真新しい印象を受けるのは、折を見て張り替えられたという畳の効果だろうか。それだけではない。茶室は使われなかったのではなく、使いこなすことができなかったのだろう。安易に立ち入ってはならないと思う程に、威厳に満ちているのだ。白井は茶を嗜む人ではなかったが、哲学を学んだ経験とその思想から、精神を集中・解放させる場の必要性を重んじていたと推測する。不思議なことに、この茶室が設計時の構想通りに使用されることよりも、使用されないまま40年の時が経ったという事実が、松濤美術館という建築全体の価値を高めているように思えた。今後も人目に触れず存在し続けるのだろう。 2022/02/03 執筆者 久芳真純

本のタイトル『縄文的なるもの 白井晟一の建築と人』 水原徳言

2022年1月、白井晟一が設計を手がけた渋谷区立松濤美術館で、40年間使われていない茶室が公開された。「Back to 1981 建物公開」と題された展覧会では、建築模型や図面はほとんど見られない。空になった展示室に足を踏み入れ、松濤美術館という建築そのものをまじまじと見る機会が提供されている。メインである茶室は入室こそ不可であったが、覗き込むように見るその形式によって、空間は神聖さを保っているように感じられた。未だ真新しい印象を受けるのは、折を見て張り替えられたという畳の効果だろうか。それだけではない。茶室は使われなかったのではなく、使いこなすことができなかったのだろう。安易に立ち入ってはならないと思う程に、威厳に満ちているのだ。白井は茶を嗜む人ではなかったが、哲学を学んだ経験とその思想から、精神を集中・解放させる場の必要性を重んじていたと推測する。不思議なことに、この茶室が設計時の構想通りに使用されることよりも、使用されないまま40年の時が経ったという事実が、松濤美術館という建築全体の価値を高めているように思えた。今後も人目に触れず存在し続けるのだろう。 2022/02/03 執筆者 久芳真純

本のタイトル『Daughter of Art History. Photographs by Yasumasa Morimura』森村泰昌

本のタイトル『Daughter of Art History. Photographs by ...

2021年11月現在、アーティゾン美術館ではゴッホに扮したセルフポートレートでデビューした森村泰昌展が開催中だ。今回森村は、青木繁を筆頭とする展覧会の登場人物85人に扮しており、大きな鼻を持つ自身の顔を「変装しやすい顔」であると話したという(似ているか、はまた別の話だが)。 以前マルセル・デュシャンに扮した森村は、以下のセリフを創作した。「なおデュシャン氏は、不在であることが存在の証だとの見解で、欠席されております。」これは森村によるデュシャンの代弁である。例えば、日向ぼっこをしながら猫のきもちになってみる事や、全速力で走ってウサイン・ボルトのきもちになってみる事と同じように、デュシャンを装い彼のきもちを想像した上での言葉選びと言えるだろう。森村の試みは文字通り「形から入る」事を体現しており、70歳を超えた今尚、美術史を顔に塗りながら学んでいるのだ。   2021/11/18 執筆者 久芳真純

本のタイトル『Daughter of Art History. Photographs by ...

2021年11月現在、アーティゾン美術館ではゴッホに扮したセルフポートレートでデビューした森村泰昌展が開催中だ。今回森村は、青木繁を筆頭とする展覧会の登場人物85人に扮しており、大きな鼻を持つ自身の顔を「変装しやすい顔」であると話したという(似ているか、はまた別の話だが)。 以前マルセル・デュシャンに扮した森村は、以下のセリフを創作した。「なおデュシャン氏は、不在であることが存在の証だとの見解で、欠席されております。」これは森村によるデュシャンの代弁である。例えば、日向ぼっこをしながら猫のきもちになってみる事や、全速力で走ってウサイン・ボルトのきもちになってみる事と同じように、デュシャンを装い彼のきもちを想像した上での言葉選びと言えるだろう。森村の試みは文字通り「形から入る」事を体現しており、70歳を超えた今尚、美術史を顔に塗りながら学んでいるのだ。   2021/11/18 執筆者 久芳真純

本のタイトル「誕生祭」山田亮太

本のタイトル「誕生祭」山田亮太

私が残すのは人以外の何かだから というわけではないけれど あなたをあなたたちのことを うんと大事に思う 生まれてきた在るに対して愛情を持つし そうでなかったとしても 確認し認識した在るに対して 抱いた気持ちを覚えている 今日は随分暑いから水分をよくとって お願いどうかずっと幸せでいて  2021/7/15 執筆者 久芳真純

本のタイトル「誕生祭」山田亮太

私が残すのは人以外の何かだから というわけではないけれど あなたをあなたたちのことを うんと大事に思う 生まれてきた在るに対して愛情を持つし そうでなかったとしても 確認し認識した在るに対して 抱いた気持ちを覚えている 今日は随分暑いから水分をよくとって お願いどうかずっと幸せでいて  2021/7/15 執筆者 久芳真純

本のタイトル「HOLES」Sveinn Fannar Johnnsson

本のタイトル「HOLES」Sveinn Fannar Johnnsson

  穴だ!穴、穴、穴。これも穴、あれも穴。 穴があったら入りたい。 いや、この穴はちょっといやだな。   石橋を叩いて渡ればいい?   2021/4/22 執筆者 久芳真純

本のタイトル「HOLES」Sveinn Fannar Johnnsson

  穴だ!穴、穴、穴。これも穴、あれも穴。 穴があったら入りたい。 いや、この穴はちょっといやだな。   石橋を叩いて渡ればいい?   2021/4/22 執筆者 久芳真純

本のタイトル「CESAR A LA DEFENSE COMPRESSIONS DE PAPIER」セザール・バルダッチーニ

本のタイトル「CESAR A LA DEFENSE COMPRESSIONS DE PAPIE...

圧縮して、圧縮して、圧縮した、その先は?その後は。これが密の限界みたい。押そうが切ろうが変わらない。これ以上小さくならない。2021/03/07 執筆者 久芳真純

本のタイトル「CESAR A LA DEFENSE COMPRESSIONS DE PAPIE...

圧縮して、圧縮して、圧縮した、その先は?その後は。これが密の限界みたい。押そうが切ろうが変わらない。これ以上小さくならない。2021/03/07 執筆者 久芳真純

本のタイトル 「Scheve Palen」 Onno Blase

本のタイトル 「Scheve Palen」 Onno Blase

  曲がっている。ぶつかったり、地面が崩れたりして曲がったポール。「こんな時代もあったなぁ」というみたいに「こんなポールもあったなぁ」と思えてくる。楽しんだほうがいい。作者によって熱心に集められたそれらは、本の中では真っすぐに立っている。2021/1/9 執筆者 久芳真純

本のタイトル 「Scheve Palen」 Onno Blase

  曲がっている。ぶつかったり、地面が崩れたりして曲がったポール。「こんな時代もあったなぁ」というみたいに「こんなポールもあったなぁ」と思えてくる。楽しんだほうがいい。作者によって熱心に集められたそれらは、本の中では真っすぐに立っている。2021/1/9 執筆者 久芳真純